理事長あいさつ 2020
理事長 白石清春
理事長あいさつ(2020年8月)
今年2020年は私が生まれて70年目にあたります。短くもあり長くもあり、障碍者運動に明け暮れた50年近くを過ごしたかと思ったら、「あれ、もう古希を迎えるのか?」と自分でも信じられないほどの年齢になったのだと驚いています。あと何年間生きていられるのかという年齢に到達したのか、後は終活をしていかなければならないのか、という何か心残る想いが沸き上がり、心の整理が上手くできていない自分の存在があります。
2020年、今年はあいえるの会の事務所と自立移行住宅・あーすろーどが建設されて、あいえるの会として新たなページを拓いていく年になるのかと、心勇んでいましたが、1月あたりから「中国の武漢で新型コロナウィルスの感染」が報告されたのを機に、あれよあれよという間に全世界に新型コロナウィルスが猛威を振るい、我が国でもじわじわと新型コロナウィルスが忍び寄って、ついには政府が非常事態宣言を発令する事態となり、「不要不急の他県との往来を禁止すること」というお触れが出て、私たちも東京や横浜、大阪などの往来は止めざるを得ませんでした。今年予定していた横浜の団体「自立の魂」とのエンパワメントプロジェクトや、大阪の「もちもちの会」との交流キャンプも来年に延期することになりました。
前述しましたが、私と橋本広芳さんの古希祝を開催してもらおうと思っていましたが、これも来年に持ち越しになりました。
そして、今年の4月24日にあいえるの会の事務所と自立移行住宅・あーすろーどの開所式を開催しようと計画していましたが、新型コロナウィルス禍の折、これも延期となり、今年の7月15日(橋本広芳さんの誕生日で大安吉日)に参加者を絞りに絞って開催いたしました。
本来なら4月24日の事務所とあーすろーどの引き渡しの日から、あーすろーどへは4名の入居者(全員重度の脳性まひ)が入居をするはずでしたが、新型コロナウィルスの脅威と入居者の支援をしていくアシスタント(介助者)がまったく集まらない状況が続いており、入居者の士気が下がっていくことが心配になっています。
あーすろーど入居者の生活を支援するアシスタント(介助者)が集まらなくとも、まずは入居者2名ずつに分かれて、夜間も含めて支援(介助)時間がどれほど必要なのかを算出するため、今年の9月初めにあーすろーどへの体験入居を行なう手筈になっています。それと同時に、以前から存在していたアシスタント(介助者)確保プロジェクトを立て直して真剣に、そして全力をあげてアシスタント(介助者)を集めていく、積極的行動を行なっていかなければならない局面にきています。
アシスタント(介助者)の確保については、10年前の東日本大震災の前後から課題になっていました。今後、アシスタント確保(郡山に限らずに全国的な問題)について如何になすべきかを、文殊の知恵を出して解決していかなければならないと考えています。
それに、この新型コロナウィルスの禍で、今後の障がい者福祉を取り巻く社会情勢がどうなるか、まったく分からない暗黒の渦中にあるのではないでしょうか。新型コロナウィルスに感染しないよう移動の自粛がなされて飲食業など多くの企業が赤字運営で、2020年の経済の低下はリーマンショックの年を上回り、来年度の予算案で福祉関係の予算が削られたら、それこそ大変です。
政府は認めたくはないようですが、わが国では新型コロナウィルスの第二波が到来しています。東京を始め大都市などでは徐々に感染者が増え続けています。もしも我が国でアメリカやヨーロッパ等々のようにパンデミックが起これば、医療崩壊が起き、「この世に役に立たない」と思われている私たち障がい者は、病院にも入院できずに家庭や施設で死を待つしかない状況に追いやられることも考えられます。現に欧米のある国では障がい者の治療は後回しにされたと伝えられています。
この新型コロナウィルス禍がいつまで続くのかも心配です。世界各国でワクチンを作るのにしのぎを削っていますが、新型コロナウィルスはすぐに変異してしまうともいわれ、せっかく開発したワクチンが効かなくなる可能性もあるとのことです。
新型コロナウィルスのみではなく、私たちに脅威を及ぼす自然災害等もこの頃、とみに多くなっています。地球温暖化により地球の気候変動が起きて、台風や大雨による災害、猛暑が続くことにより熱中症の危険が高まっている今日、本当に生きづらくなっています。
私たち人類が「今ある幸せ」「経済発展」を追い求め過ぎた結果、化石燃料を大量に消費し、二酸化炭素を増やして、マイクロプラスチックは海や大気に充満し、森や山を開拓して動植物を滅亡に追い込んでいるのです。この他にも農薬の問題、原発の問題等、数限りないほどに地球に対して悪さをしている私たち人間の存在があります。以前に、テレビの番組を見ていた時、「今から10年の期間で人間の方向性が決まる」と言っていました。つまり、このまま経済発展を続け地球を汚し続ければ、十年後に人類は滅亡の淵まで追い詰められると警告していました。経済発展だけを考える世界から離れて、地球の自然環境を取り戻すことを目的に人類が舵を切れば、人類の未来が拓けるとのことです。
新型コロナウィルスが世界中に広まったのも、地球からの警告かもしれません。
私たち障がい者は、障がい者問題だけを考えるのではなく、広く世界の問題、地球の問題まで深く考え、時には行動に移していくことも必要ではないかと思います。
現代は八方塞がりの世の中ですが、それでも希望を持って、夢を描いて、いつも笑顔で明るく生きていくこと信条に生きていかなくてはならないですね。そのような人たちが多くなれば、きっと世の中が良い方向に変わっていくのではないでしょうか。
何度も言いますが、あいえるの会として、郡山のまちなかに重度の障がい者たちを自立に導いていく自立移行住宅・あーすろーどを建設したので、全力をあげてアシスタント(介助者)を確保して、4名の重度の脳性まひ者のあーすろーど入居をなるべく早くに達成したいと考えています。障がい者がまちなかで生きていくことにより、他の市民の目に障がい者の姿を焼き付けなければなりません。それが第一歩になり、障がい者と健常者の交流が始まり、付き合うことにより双方が理解し、時間はかかると思いますが、障がい者差別が無くなっていくのではないでしょうか。
あと何年、現役で行動していけるのか分かりませんが、できるだけ精神年齢を若く保ち、健康面を考えて、これからもあいえるの会の理事長を務めさせていただき、郡山、あるいは福島県の障碍者福祉の発展に少しでも寄与していきたいと考えていますので、皆さま、よろしくお願いいたします。